クレーム対応〈感情をしずめる編〉―怒りのピークを越えさせる「3つのワードチョイス」

コミュニケーション雑記

どーも。蔵治(Kuraji)です。

前回の記事では、クレーム対応の初動として「遮らずに聴く」「感情に共感する」「できることを明確にする」の3ステップをお伝えしました。今回はその続き、感情が高ぶったままの相手に対して、どうやって落ち着きを取り戻してもらうかをテーマにお話しします。

「こちらが謝っているのに、相手の温度感はどんどん高くなり、ずっと怒っている」「感情的になられると、こちらまで焦ってしまう」――そんな経験はありませんか?

クレーム対応において、感情の高ぶりのピークを越えさせることは、問題解決と同様に重要なスキルです。

なぜ謝っても相手の怒りが収まらないのか

初動でしっかり謝罪をしているのに、相手の怒りがいっこうに収まらない。クレーム対応では、こういった場面は珍しくありません。

こういう状況に陥っている原因のひとつとして、謝罪が相手に「言葉」だけで届いているケースが多いことが挙げられます。

人が怒りを感じているとき、脳は興奮状態にあります。この状態では、言葉の内容より「どう感じさせているか」の方が重要です。どれだけ状況に応じた正確な謝罪の言葉を選んでも、相手が「この人は私の言っていることを本当にわかってくれている」と感じてもらえなければ、感情のピークを越えることはできません。

感情をしずめるのは「正しい言葉」ではなく、「相手に届く言葉」です。

怒りのピークを越えさせる「3つのワードチョイス」

① 相手の感情を「言語化」して返す

感情が高ぶっている相手に有効なのが、相手の気持ちを言葉にして返すことです。

「そのような状況では、ご不安になられるのは当然だと思います」「それは本当にご不快な気分を抱かれたと思います」――相手の感情をこちらから言葉にすることで、「自分の気持ちをわかってもらえた」という感覚が生まれます。

ポイントは、相手が使った言葉とトーンに合わせることです。相手が「不安だった」と言っているなら「ご不安だったのですね」と返す。相手が「腹立たしかった」と言うなら「ご不快な思いをされたのですね」と返す。ただ、自分の言葉に置き換えすぎると、「ちょっと違う」と感じさせてしまいますので注意が必要です。また、相手が言ったことを同じ内容で端的に言い返すことをオウム返しといいます。このコミュニケーション方法を使うと、相手への共感や理解を示すことができて、話が伝わっているという印象を与えることができます。

オウム返しには、もう一つの効果がある

オウム返しや復唱には、相手の感情をしずめる以外に、対応するこちら側を助ける効果もあります。

正直に言うと、クレームを受け止め続けていると、対応しているこちら側にも少なからず疲労感が出てきます。そうなると、相手の話が頭に入ってこなくなることがあるのです。

そんなとき、オウム返しや復唱をして話を整理すると、自分自身が話の筋道を見失わずに済みます。相手のためのテクニックだと思われがちですが、実は自分の集中力を保つための技術でもある――これは長く対応してきて実感したことです。

② 「時間」を使って感情を落ち着かせる

人の怒りには「ピーク」があります。怒りの感情は上がり続けるわけではなく、あるポイントを越えると自然に下がり始めます。

そのピークを早く越えさせるために有効なのが、「復唱」です。「おっしゃっていることを確認させていただきますと、○○の際に△△があったということでよろしいでしょうか」と、相手の話を丁寧に繰り返すことで、会話の速度が落ちます。

会話の速度が落ちると、相手の感情も少しずつ落ち着いてきます。焦って話を進めようとせず、意図的にゆっくりとしたテンポを作ることが感情の鎮静化につながります。

③ 「あなたの味方です」を言葉と態度で示す

怒りが続く相手の多くは、「自分が軽く扱われている」「どうせ何を言ってもわかってもらえない」という不信感を抱えています。

この不信感を解くのが、「一緒に考える」という姿勢です。「おっしゃる通り、この状況は改善が必要だと思います」「ご指摘いただいたことは、貴重なご意見として担当部署に共有させていただきます」――解決の約束ではなく、「あなたの声を受け取った」という誠意を示すことで、相手は「戦う必要がない」と感じ始めます。

やりがちな失敗:感情に引きずられてしまう

クレーム対応で難しいのは、相手の感情が激しくなるほど、こちらも焦りや萎縮、時には反発に転じてしまうことです。

特に注意が必要なのは「早く終わらせたい」という焦りです。この焦りが出ると、声のトーンが上がる、言葉が早くなる、話を遮ろうとするといった行動につながります。これらはすべて、相手の怒りを再燃させる引き金になります。

感情が高ぶっている相手に対応するときは、自分自身のトーンを意図的に「ワントーン下げる」ことを意識してください。相手が大きな声で話していても、こちらは落ち着いた声で返す。この「声の落差」が、場の空気を変えます。また、話す速度もいつもより遅くすることを意識しましょう。会話のテンポが速くなると静まっていた感情に火をつけてしまう可能性があります。

私の失敗 ―ゴールが見えたときほど、急いではいけない

私自身の失敗談をお話しします。

クレーム対応をしていると、「この部分さえ理解してもらえたら、このクレームは解決する」という瞬間が見えることがあります。ゴールが見えた、と感じる場面です。

ところが、そこで私は話や説明を急いでしまったのです。結果、相手の温度感を上げてしまい、せっかく見えていた着地点が遠のいてしまいました。

ゴールが見えているときこそ、落ち着いて話を詰めていく必要がある――これは苦い経験から学んだことです。解決が近いと感じたときほど、こちらのペースが速くなっていないか、意識して確認するようにしています。

揚げ足取りタイプへの対応

もう一つ、感情に引きずられやすいのが、いわゆる揚げ足取りタイプの相手です。恥ずかしながら私も、相手を言い負かそうとして、かえって温度感を上げてしまったことがあります。

このタイプに対する最善策は、はっきりしています。こちらの温度感を上げず、むやみにしゃべらず、淡々と正しい回答を重ねること。途中でこの対応に切り替えたことで、その案件は無事にクローズできました。

言い負かす必要はありません。勝ち負けの土俵に乗らないことが、最短の解決策です。

なぜ「下げる」のか ―通常対応との使い分け

「ワントーン下げる」の意味を、もう少し具体的にお伝えします。

実は、通常のカスタマー対応では、私はワントーン"上げて"います。相手に重い印象を持たせないためです。明るく、話しかけやすい雰囲気を作ることが大切だからです。

ところが、クレーム対応で同じようにワントーンを上げた状態で入ると、相手に悪い意味で「軽い」印象を与えてしまうリスクがあります。真剣に受け止めていない、と感じさせてしまうのです。

だからこそ、あえてワントーン下げる。これには、自分の存在に重みを持たせる効力があると考えています。

ただし、誤解のないように付け加えると、重みを持たせるのは声と存在であって、言葉遣いではありません。言葉自体は、きちんとお客様対応用の丁寧な文言を選んで発言します。

この使い分けは、特にオペレーターから対応を引き継いだ場面で効果を発揮します。声のトーンが変わるだけで相手の温度感が下がり、案件をクローズに持っていきやすくなるケースが多い、というのが実感です。

まとめ:感情をしずめるのは「共感の積み重ね」

怒りのピークを越えさせるのは、論理ではなく共感です。

相手の感情を言葉にして返す、オウム返しや復唱で相手に共感していることを示して、会話のテンポを落とすことで温度感を下げる。そして、味方であることを示す。この3つのアプローチを意識するだけで、感情的なクレーム対応の場面でも落ち着いて対処できるようになります。

次回クレームが発生したとき、まず「オウム返しや復唱をして、会話のテンポと声のトーンを落とす」ことを意識してみてはいかがでしょうか。

それではまた!!

再発を防ぐ仕組みづくりについてはクレーム対応〈再発防止編〉でお伝えしています。

この記事を書いた人

コールセンター業界で管理職として10年以上。100〜500名規模の複数現場で、スタッフ育成・1on1・面談・クレーム/カスタマーハラスメント対応・新規業務の立ち上げ・管理者マネジメントを経験してきました。記事は自身の現場経験をもとに、成功談だけでなく失敗談も含めて書いています。

蔵治 英幸をフォローする
コミュニケーション雑記
蔵治 英幸をフォローする
蔵治(くらじ)の手習い帳
タイトルとURLをコピーしました