どーも。蔵治(Kuraji)です。
今回から3回シリーズで「クレーム対応」をテーマにお伝えします。第1回は「初動対応」です。
「クレームが発生したとき、何をすればいいのかわからない」「とにかく謝ればいいのか、説明すればいいのか判断できない」――そんな悩みを持つ方に向けた内容です。
結論から言うと、私の経験では、初動の受け止め方が、その後の話し合いを大きく左右します。

私が今でも忘れられない、繁忙期の「プレゼント」クレーム
クレーム対応の話をするとき、私がいつも思い出す出来事があります。
ある繁忙期、対応件数が普段の何倍にも膨れ上がっていた時期のことです。あるお客様が、お世話になった方へ贈るプレゼントを、電話で注文してくださいました。「代金は振り込みで支払いたい」というご希望でした。
ところが、対応したオペレーターが支払い方法を取り違え、代金引換で手配してしまったのです。結果どうなったか。私の記憶では、お客様が心を込めて選んだ”贈り物”が、受け取る相手に商品代金と送料の両方を請求される形で届いてしまいました。善意のプレゼントが、まるで無理やり商品を送り付ける嫌がらせのようになってしまったのです。
これは、通信販売で最も避けなければならないミスです。お客様が怒るのは当然でした。商品の不備ではなく、「人の気持ちを踏みにじってしまった」のですから。この一件は、初動対応のすべてが問われる場面でした。これからお伝えする内容は、こうした現場での経験から学んだものです。
クレームは「感情の問題」であることを理解する
クレームを受けたとき、多くの人が最初にやってしまうことがあります。
それは「なぜそうなったかの説明をしようとする」ことです。
事実を伝えたい、誤解を解きたい――その気持ちは理解できますし、理性的な行動であると思います。しかし、クレームを入れているお客様や相手は、まだその段階にいません。つまりあなたの説明を聞ける状態ではないのです。
怒りや失望を感じているとき、人は「理解してほしい」「共感してほしい」という状態にあります。そこに説明や言い訳を持ち込むと、「話を聞いてもらえない」と受け取られ、火に油を注ぐことになります。
初動でまずやるべきことは「説明」ではなく「感情の受け止め」です。
初動対応の「3つのステップ」
ステップ①:話を遮らずに最後まで聴く
クレームが発生したら、まず相手に言い分をすべて話してもらいます。大事な点として話を聴いている途中で、こちらから説明しようとしない、反論しない、言い訳しない。
この時にすることは、「はい」「〇〇でございましたか」「〇〇の部分について、ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。」「〇〇についてご不便をおかけいたしました」――相槌を打ちながら、傾聴を続けます。また、謝罪の時には相手が申し出たことすべてに対して謝罪をするのではなく、相手が不快に感じたり、納得できていないことについて謝罪をします。これを限定謝罪といいます。部分的な謝罪を用いることで、相手の感情に寄り添うことができます。
最後まで話し終えると、少し気持ちが落ち着かれる方が多くいます。「ちゃんと聞いてもらえた」という感覚が、次のステップへの扉を開きます。これはコールセンターの現場で10年以上クレームに向き合ってきた中で、私が最も強く実感していることです。
ステップ②:感情に共感してから事実確認に入る
相手が自身の言い分を話し終えたら、まず感情に対して言葉を返します。
「〇〇の対応で配慮が足りておりませんでした。大変不快なお気持ちになられたことと思います。誠に申し訳ございませんでした。」
謝罪と共感を先に伝えてから、事実確認に移ります。「詳しくお聞かせいただけますか」「いつ頃のことでしょうか」と、5W1Hで状況を整理していきます。
ポイントは、謝罪と事実確認をセットにしないことです。「申し訳ありませんが、確認させてください」という言い方は、謝罪と確認が混ざって相手に「言い訳している」と取られやすい。謝罪を先に完結させてから、切り替えて確認に入る順番を守ります。
ステップ③:その場でできることとできないことを明確にする
事実が確認できたら、対応方針をはっきりと伝えます。
「本日はお話をお預かりして、回答は担当に確認のうえ、○月○日までにご連絡します。」
「できること」と「できないこと」を曖昧にせず、期限を明示します。「確認して折り返します」だけでは不十分です。「いつまでに」を必ずセットにすることで、相手の不安を取り除き、話を一度クローズできます。また、「確認が出来なかった場合でも、○月○日までにご連絡します。」という言葉を添えることで責任をもって対応してくれている印象を与えることができますのでクレーム対応として有効な手段の一つとなります。

実際の会話例:上席が引き継いでから終話まで
ステップだけでは、実際にどう話せばよいのかイメージしにくいと思います。そこで、私が上席として電話を代わる場面を想定した会話例を、名乗りから終話まで通しで載せておきます。実際の通話の逐語記録ではなく、私の経験をもとにこの記事用に再構成したものです。言い回しは職場に合わせて調整してください。
想定は、冒頭でお伝えした贈り物の一件です。支払い方法を取り違え、受け取った方に代金引換で請求が届いてしまった。オペレーターでは収束できず、私が代わる場面から始めます。
① 名乗る
大変お待たせいたしました。お電話を代わりまして、私、○○が対応いたします。
ここで一度、言葉を切ります。名乗った直後の相手の反応で、次に「謝罪」から入るか「自分の立場の説明」から入るかを切り分けます。
- 怒りをそのままぶつけてこられた → 謝罪から入る
- 「あなたは誰だ」「責任者か」と問われた → 立場の説明から入る
②-A 謝罪から入る場合
このたびは、大切な贈り物のお支払いについて、私どもの手違いでご迷惑をおかけいたしました。誠に申し訳ございません。
②-B 立場を説明する場合
私は、このセンターで対応の責任を預かっております。本日は私が最後までお話をうかがいます。
「私が最後まで」と伝えることで、また別の人に回されるのではないかという相手の警戒が解けます。
③ 遮らずに聴ききる
ここで発するのは相槌だけです。説明も反論も言い訳もしません。
はい。
さようでございましたか。
お受け取りの際に、そのようなご説明になってしまっていたのですね。
④ 限定謝罪で、感情に的を絞る
お気持ちを込めてお選びいただいた贈り物が、お受け取りの方にご負担をおかけする形で届いてしまいました。その点につきまして、大変ご不快なお気持ちにさせてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
すべてに謝るのではなく、相手が不快に感じた一点に絞って謝る。これが限定謝罪です。
⑤ 謝罪を完結させてから、事実確認へ切り替える
謝罪と確認を、同じ一文につなげません。一度、間を置いてから切り替えます。
差し支えなければ、状況を正確に確認させていただけますでしょうか。
ご注文をいただいたのは、いつ頃でございましたでしょうか。
⑥ できること・できないこと・期限を示す
本日はお話をお預かりし、担当に確認のうえ、○月○日までにご連絡いたします。
万が一、確認が間に合わない場合でも、○月○日までに必ず経過をご連絡いたします。
⑦ 終話
この度は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
あわせて、ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございませんでした。
また、ご不明点などがございましたら、ご連絡をいただけますと幸いでございます。
「ご不快な思い」の部分は、状況に応じて「ご不便をおかけしてしまい」に置き換えます。手違いでお手間をかけた場合は後者のほうが自然です。
初動でやりがちな失敗 ―「正しい説明」に走ってしまう
こうした場面で、私自身が何度もやってしまった失敗があります。それは、「正しい説明をすること」に徹してしまうことです。
ミスの経緯を正確に伝えよう、こちらの事情を分かってもらおう――そう思うあまり、お客様が話している最中に、つい説明をかぶせてしまう。これは火に油を注ぐ最悪の初動です。どれだけ内容が正しくても、話を遮られた相手は、ますますヒートアップしていきます。
経験から学んだ鉄則は、たった一つです。まず、相手に言いたいことを言いきらせること。私の経験では、言いたいことを最後まで話し終えると、少しずつ落ち着かれる方が多くいました。ただし、聴き続ければ必ず落ち着くというものではありません(暴言や長時間の拘束がある場合は、後半の「3つのタイプ」で触れる対応に切り替えます)。初動の数分間は、説明する時間ではなく、聴ききる時間なのです。
やりがちなNG行動3つ
NG①:すぐに「でも」「ただ」を使う
「おっしゃる通りです。ただ、こちらとしては――」
この「ただ」「でも」「しかし」は、相手の感情を刺激して、鎮火した感情にもう一度火をつける言葉となります。共感した直後に逆接を使うと、「結局言い訳したいんだな」と受け取られます。初動の段階では逆接ワードは封印することを意識してください。
NG②:その場で結論を出そうとする
内容を十分に確認しないまま、その場で「わかりました、対応します」と言ってしまうケース。後から「やっぱりできません」となると、二重のクレームになります。初動では「確認のうえ、○月○日までに対応の可否をご連絡いたします」と、期限をつけて返します。
NG③:たらい回しにする
「その件は担当が違いまして――」と即座に別の窓口に回すこと。最初に受けた人間が責任を持って一次対応することが、相手への誠意の示し方です。担当外でも「私が確認して担当からご連絡させます」と引き取る姿勢が大切です。

言い換え早見表
NG行動を、この記事用に言い換えの形へ整理しました。表の言い回しは一例ですので、職場の言葉づかいに合わせて調整してください。
| 場面 | 言ってしまいがちな言葉 | 言い換え | 理由 |
|---|---|---|---|
| 共感した直後 | おっしゃる通りです。ただ、こちらとしては | 「おっしゃる通りでございます」もしくは「さようでございましたか」(一度切る) | 逆接が入ると「言い訳」に聞こえる。ただし全面的に肯定すると理不尽な要求まで認めたことになるため、状況によっては共感で留める |
| 謝罪と確認 | 申し訳ありませんが、確認させてください | 申し訳ございませんでした。(間)差し支えなければ、状況を確認させていただけますでしょうか | 混ぜると謝意が薄れる |
| 折り返し | 確認して折り返します | 回答が出る出ないに関わらず、○月○日までにご連絡いたします | 期限がないと不安が残る。回答の有無に触れておかないと、期日に回答が出ていない場合に二次クレームへ発展する |
| 担当外の用件 | その件は担当が違いまして | 私が確認し、担当からご連絡させます | たらい回しは誠意のなさと受け取られる |
| その場の判断 | わかりました、対応します | 確認のうえ、対応の可否をご連絡いたします | 後から覆すと二重のクレームになる |
| 謝罪の範囲 | すべて私どもが悪うございました | ○○の点につきまして、申し訳ございませんでした | 限定謝罪で事実と感情を切り分ける |
初動で見極める、クレームの「3つのタイプ」
もう一つ、長年の対応で身についた指針があります。クレームを言うお客様は、経験上、大きく3つのタイプに分かれます。初動でどのタイプかを見極めると、その後の対応がぶれません。
①商品・サービスに納得がいっていない方
「買ったものが期待と違った」というタイプ。謝罪と、代替商品・代替サービスの提案で、解決に向かいます。
②対応の粗相などで、感情面が納得いっていない方
先ほどのプレゼントの件のように、こちらの落ち度で気持ちを害してしまったタイプ。丁重なお詫びと、相手の感情への共感が解決の鍵です。「それはお怒りになって当然です」と、まず気持ちに寄り添います。
③とにかくクレームを言いたい方
説明しても揚げ足を取られてしまい、建設的な解決が難しいタイプです。必要最低限の会話と、限定的なお詫びにとどめ、話が一巡するまで受け止めます。
ただし、これは通常の苦情対応の範囲に収まっている場合の話です。暴言や脅し、長時間の拘束がある場合は、無期限に聴き続けてはいけません。会社の方針に沿って管理者へ引き継ぎ、注意や対応の終了を判断します。担当者を一人で耐えさせないことが優先です。
(③の詳しい対処は、別記事「カスタマーハラスメント対応〈スタッフを守る編〉」で解説しています)
まとめ:初動は「鎮火」のための時間
クレーム対応の初動は、問題を解決する場ではありません。相手の感情を落ち着かせ、話し合いができる状態を作るための時間です。
話は遮らずに聴く、感情に共感する、できることとできないことを明確にする。この3ステップを守るだけで、初動対応の質は大きく変わります。
もし次回クレームが発生したときは、まず「相手の感情に寄り添って最後まで聴くこと」を意識してみてはいかがでしょうか。
それではまた!!


