部下の育成〈OJTの進め方編〉―「見て覚えろ」では育たない時代の教え方

コミュニケーション雑記

どーも。蔵治(Kuraji)です。

以前、「部下との面談」シリーズで、部下との向き合い方をお伝えしました。今回はその一歩先、「部下の育成」、なかでも日々の現場で行う OJT(仕事を通じた指導) の進め方がテーマです。

「新人がなかなか育たない」「教えているのに、同じミスを繰り返す」――そんな悩みを持つ方は多いのではないでしょうか。でも、それは部下の能力のせいではなく、「教え方」に改善の余地があるのかもしれません。

かつての職場では「仕事は見て覚えろ」が当たり前でした。しかし、今の時代にそれは通用しません。コールセンターで10年以上、たくさんの新人を育ててきた経験から、人が育つOJTの進め方をお伝えします。

なぜ「見て覚えろ」では育たないのか

背中を見せるだけでは伝わらない

「先輩の背中を見て学べ」という育て方は、一見かっこよく聞こえます。でも、これは教える側が「教える責任」を放棄しているとも言えます。

何を・どこを・どう見ればいいのか。それを示さないまま「見て覚えろ」と言われても、新人は何を学べばいいのか分かりません。結果、覚えるまでに時間がかかり、自己流のクセがつき、本人も「自分はダメだ」と自信を失ってしまいます。

「できる人」が「教えられる人」とは限らない

もう一つの落とし穴が、「仕事ができる人=教え上手」とは限らない、ということです。

ベテランほど、作業が体に染みついていて「なぜそうするのか」を言葉にできなくなりがちです。「これはこうするもの」と感覚で済ませてしまう。教えるためには、自分の中で当たり前になっている手順を、もう一度言葉に「分解」する作業が必要なのです。

言語化できていないことが、ミスを誘発する

実際の現場でよく見られる場面があります。

個々の練度や精度、感覚・才能によってクオリティが変わってくる業務フローが存在すると、その部分で個別のミスが発生しやすくなる傾向がありました。

原因は、言語化ができていないことです。感覚に頼った指導は、教わる側にとって「落とし込み方が分からない」抽象的な指導になり、結果としてミスを誘発してしまいます。

だからこそ、まず手順を言語化し、それに沿ったマニュアルを作成することが重要です。言葉にできて初めて、誰でも同じように落とし込める指導になります。マニュアル整備の考え方は、複数名で研修を進めるときの注意点〈準備とスタンス編〉でも詳しくお伝えしています。

人が育つOJTの「型」

①やってみせる → ②説明する → ③やらせてみる → ④振り返る

効果的なOJTには、シンプルな4ステップの型があります。

①やってみせる:まず手本を見せる
②説明する:「なぜそうするのか」を言葉で伝える
③やらせてみる:実際に本人にやってもらう
④振り返る:良かった点と改善点をフィードバックする

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば人は動かじ」――これは山本五十六の有名な言葉ですが、OJTの本質を見事に言い表しています。見せて終わり、説明して終わりではなく、やらせて振り返るところまでが1セットです。

一番大切なのは「④振り返る」

この4ステップで、つい省略されがちなのが最後の「振り返り」です。

「やらせっぱなし」では、本人は自分のできを判断できません。「ここが良かったね」「次はここを意識してみよう」と具体的に伝えることで、はじめて学びが定着します。できたことをしっかり認める。これが、次への意欲につながります。

振り返りの本当の目的は「解消」すること

振り返りというと、「できた部分をほめる」ことに意識が向きがちです。もちろんそれも大切ですが、一番の目的は別にあります

それは、やってみて「できなかったこと」「分からなかったこと」を解消することです。そこをクリアにすることで、次のサイクルで何を改善すべきかが見えてきます。これを繰り返すことで、新人はやがてベテランやスペシャリストへと成長していきます。

さらに、振り返りにはもう一つ活用法があります。複数の新人にOJTを実施していて、不明点やつまずくポイントが同じだった場合、それは個人の問題ではなくマニュアル側の問題かもしれません。該当箇所のマニュアルを作成・見直しすることで、より効率的なOJTや業務改善につながります。

育成でつまずかないための「心構え」

一度に多くを教えない

熱心な指導者ほど、「あれもこれも」と一度にたくさん教えようとします。でも、人が一度に覚えられる量には限りがあります。

詰め込みすぎると、結局どれも身につきません。「今日はこれだけ覚えよう」と、教える量をしぼること。一歩ずつ、確実にできることを増やしていくほうが、遠回りなようで一番の近道です。

基本と応用、どこまで教えるかのちょうどいい塩梅

私自身、一つのタスクについて基本事項に加えて、そこから発生しうる応用編まで丁寧に教えていた時期がありました。

しかし、これには落とし穴がありました。横道にそれることが多くなり、OJT全体の進捗が遅くなる傾向があったのです。

そこで、まず新人に教えるのは基本事項のみに切り替えました。初期段階で応用の枝葉に触れてしまうと、細かい部分ばかり覚えてしまったり、気になってしまったりするからです。

ただ、正直なところ、応用部分をまったく盛り込まないのも現実的ではありません。業務には基本以外の応用が次々と発生するからです。

落としどころとして今考えているのは、基本事項に加えて「よくある応用パターン」だけを盛り込んでOJTを進める、というバランスです。これが、今のところ一番ちょうどいい塩梅だと感じています。基礎から教えるという考え方は、複数名で研修を進めるときの注意点〈準備とスタンス編〉でも触れていますので、あわせてご覧ください。

できないのは「本人のせい」と決めつけない

部下が思うように育たないとき、つい「本人のやる気の問題」と考えたくなります。でも、その前に一度立ち止まってみてください。

「自分の説明は分かりやすかったか」「やらせてみる機会を十分に与えたか」。教え方を振り返ることで、改善できる点はたいてい見つかります。育成は、教える側と教わる側の二人三脚。相手のせいにした瞬間、成長は止まってしまいます。

まとめ

OJTは、「見て覚えろ」ではなく、意図を持って設計するものです。

①「背中を見せる」だけでは伝わらない。手順を言葉に分解する
②「やってみせる→説明→やらせる→振り返る」の4ステップで教える
③一度に多くを教えず、できない原因を相手だけのせいにしない

部下が育つということは、あなたのチームの力が底上げされるということ。少し手間はかかりますが、丁寧なOJTは必ずチーム全体の財産になります。まずは「やらせて、振り返る」ところまでを意識することから始めてみてください。

また、新人の人数が多い場合などは、自分以外の複数名で研修やOJTを進めるケースもあると思います。この場合は、上記以外に研修の進め方の注意点があります。詳しくはコミュニケーション雑記の「複数名で研修を進めるときの注意点〈準備とスタンス編〉」で紹介していますので、もし複数名で研修講師をする場合は、あわせて読んでいただけるとスムーズな研修実施につながると思います。

それではまた!!

この記事を書いた人

コールセンター業界で管理職として10年以上。100〜500名規模の複数現場で、スタッフ育成・1on1・面談・クレーム/カスタマーハラスメント対応・新規業務の立ち上げ・管理者マネジメントを経験してきました。記事は自身の現場経験をもとに、成功談だけでなく失敗談も含めて書いています。

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