どーも。蔵治(Kuraji)です。
前回の「クレーム対応〈感情をしずめる編〉」では、お客様の怒りのピークを越えさせるための3つのワードチョイスをお伝えしました。今回は、クレーム対応シリーズの締めくくりとなる「再発防止編」です。
クレームの場を無事に収められたとき、「やれやれ、終わった」と思いたくなる気持ちはよくわかります。でも、ちょっと待ってください。同じようなクレームが1ヶ月後にまた別のお客様から発生したら、どうでしょう?
コールセンターで10年以上、管理職として現場に立ってきた経験から言うと、「再発防止」こそがクレーム対応の本当の仕上げです。今回は、クレームを「次への学び」に変えるための振り返りと改善の進め方を3つのステップで解説します。

なぜ再発防止が「クレーム対応の仕上げ」なのか
クレームが繰り返す本当の理由
「またあのお客様から電話が来た」「そういえば、似たようなクレームが先月もあった気がする」
クレームが繰り返す現場には、共通した原因があります。それは、「対応はしたが、原因に対処をしていない」ことです。
個人がうまく対応できるかどうかに目が向きがちですが、同じクレームが繰り返すのは多くの場合、仕組みやプロセスの問題です。人が変わっても問題の種は残ったまま。だから同じことが起きます。
再発防止はお客様への「最後の誠意」
お客様の立場から見ると、クレームを伝えるというのは、それなりにエネルギーを使う行為です。それでも連絡してくれたということは、「改善してほしい」という期待が込められています。
その期待に応えるのが再発防止です。「あなたのクレームは、改善に活かされました」と言える状態にすること。これがお客様への最後の誠意であり、会社への信頼を取り戻す最大の機会でもあります。

ステップ①「何が起きたか」より「なぜ起きたか」を問う
原因を3つの層で見る
再発防止のための振り返りでは、「何が起きたか(事実)」を整理するだけで終わらせないことが重要です。その先の「なぜ起きたか(原因)」を、3つのレイヤーに分けて掘り下げます。
- ①対応者 :担当者のトークスキル・知識・判断のどこに課題があったか
- ②プロセス:対応フローの流れ・手順・ルール・業務のどこかに抜け漏れがあったか
- ③業務設計:制度・体制・情報共有の業務設計に問題はなかったか
たとえば「担当者の説明が不足していた」という事象があったとき、①個人の問題で終わりにするか、②マニュアルに説明すべき内容が明記されていなかったか、③そもそも担当者に情報が届く仕組みになっていなかったか、まで掘り下げるかでは、改善策がまったく変わってきます。
現場では「個人の失敗」で終わらせがち――その落とし穴
正直に言うと、多くの現場では振り返りが「①個人のレイヤー」で止まります。「〇〇さんの対応が悪かった」で終わってしまう。
しかし、それでは本当の意味での再発防止にはなりません。個人を責めても、プロセスや仕組みが変わらなければ、次の担当者が同じ失敗を繰り返します。振り返りの場では、②と③の層まで必ず確認するクセをつけることが大切です。

ステップ②チームで振り返る場のつくり方
感情的にならない振り返りの進め方
振り返りの場は、うまくやらないと「反省会」「犯人探し」「当事者の詰め会議」になりがちです。そうなると、スタッフは萎縮し、次から正確な情報の吸い上げが難しくなります。
感情的にならない振り返りのコツは、「事実ベースで話す」ことに徹することです。
- 「なぜできなかったんだ」ではなく「どのタイミングで何が起きたか」を確認する
- 「あなたの原因だ」ではなく「対応フローで難しいポイントはどこか」を問う
- 個人の感情・態度ではなく、行動・プロセスにフォーカスする
「事実を整理する場である」と最初に共有するだけで、場の雰囲気はかなり変わります。
一番難しいのは「相手によって伝え方を変える」こと
事実ベースで話す。これは原則として正しいのですが、実際にやってみると、これだけでは足りません。
なぜなら、同じ伝え方をしても、オペレーターによって受け取り方がまったく違うからです。ここが振り返り(フィードバック)で一番難しいところだと、私は感じています。
【自分を責めてしまうタイプ】
改善点を伝えると、必要以上に自分のせいだと抱え込んでしまうタイプがいます。このタイプに重めのフィードバックをすると、モチベーションの低下や、最悪の場合は離職につながります。
対応としては、「できていた点」と「改善点」の比重を変えること。そして、提示する順番にも配慮することです。できていたことを十分に伝えてから改善点に触れる。同じ内容でも、伝わり方がまったく変わります。
【自分は悪くないという態度を示すタイプ】
逆に、非を認めようとしないタイプもいます。この場合、感情で押さえつけるのは逆効果です。
ここでこそ、事実ベースで改善点を淡々と指導するのが有効です。感情論の応酬にせず、起きたことと改善すべき行動だけを、静かに積み上げていきます。
【タイプがまだ分からないとき】
難しいのは、初めてフィードバックをする相手です。どちらのタイプか分からないため、様子を見ながら伝えるしかありません。反応を見て、比重や言い方を調整していく。ここは今でも気を使う場面です。
「事実ベースで話す」は土台。そのうえで、相手に届く形に調整する――このひと手間が、振り返りを本当に機能させます。
「犯人探し」から「仕組みの改善」へ切り替える
振り返りを取りまとめる立場(リーダー・管理職)が特に意識したいのは、「誰が悪かったか」を探す場にしないことです。
「どの部分を改善すれば次は防げるか」という問いを中心に議論を組み立てる。担当者が「責められた」と感じない場をつくることが、長い目で見て正直な情報共有ができる組織文化につながります。
ステップ③改善策を「形」にして定着させる
改善策は「誰でもできる」レベルに落とし込む
振り返りで原因が見えたら、改善策を具体的な行動レベルまで落とし込みます。
「丁寧な対応を心がける」「説明を徹底する」のような抽象的な言葉は、改善策になりません。誰でも・いつでも・同じようにできる行動に変換することが大切です。
- 「説明が不足していた」→「当該情報をトークスクリプトや業務資料に落とし込む」
- 「情報共有が遅れた」→「当日〇時までにチャットや社内ツールで報告や情報共有をするルールを追加する」
- 「対応のばらつきがあった」→「定期的なモニタリングで対応品質を確認して、フィードバックを行う」
改善策は、行動・期限・担当者がセットになって初めて「動く改善策」になります。
定着を確認する小さな仕掛けをつくる
改善策を決めて終わり、では半分しか仕事が終わっていません。決めたことが実際に現場に浸透しているかを確認する「小さなスキーム(仕掛け)」が必要です。
- 事例共有の意味をふくめて改善内容をチェックリスト化して現場に共有をする
- 週初めの朝礼で「先週決めた改善、実行できた?」と一言確認する
- 月初もしくは月末に「同じクレームが発生していないか」を確認する
大げさな仕組みは不要です。「確認のタイミング」を最初から決めておくだけで、改善策は実行され続けます。
毎日の朝礼で唱え続けた、通販業務のミス防止
定着の仕掛けとして、実際に効果を実感した取り組みをご紹介します。
通販業務で、受注時によく発生するミスがありました。絶対に防がなければならない類のミスです。
やったことは、驚くほどシンプルです。そのミスを、毎日の朝礼で周知し続けました。
ポイントは「毎日」であることです。人は入れ替わりますし、シフト制の職場では全員が同じ日に揃うとは限りません。毎日繰り返すことで、全員に確実に周知が行きわたります。
そして、面白い変化が起きます。しばらく続けていると、オペレーターから「またその話か」というリアクションが返ってくるようになるのです。
実は、これが出たらしめたものです。「またか」と思われるということは、そのミス事例が全員の中に染みついた証拠だからです。うんざりされることを恐れて周知をやめてしまうと、そこで定着が止まります。
ただし、注意点もあります。やりすぎはモチベーションの低下を招きます。毎日同じ調子で言い続けるのではなく、伝え方を変えたり、頻度を調整したり――ある程度のさじ加減は必要です。
大がかりな仕組みを作らなくても、「毎日、短く、繰り返す」だけで改善策は定着していきます。
まとめ
クレーム対応の再発防止は、3つのステップで進めます。
- ①「なぜ起きたか」を3つのレイヤー(対応者・プロセス・業務設計)に分けて掘り下げる
- ②事実ベース・仕組み改善フォーカスで振り返りの場をつくる
- ③誰でもできる具体的な改善策に落とし込み、定着を確認する
クレームは「起きてしまったこと」ですが、再発防止まで完了して初めて「次への学び」に変わります。同じ問題を繰り返さない組織をつくることが、現場を守り、お客様の信頼を積み重ねていくことにつながります。
クレーム対応シリーズ(全3回)はこれで完結となります。興味をもたれたら、ぜひ〈初動対応編〉〈感情をしずめる編〉もあわせてご覧ください。
また、今回シリーズで紹介した対応を行っても、クレームが発生することはあります。それはお客様側の事情でクレームが発生するケースです。この場合は、カスタマーハラスメントの対応を踏まえて対応していく必要があります。今後、カスタマーハラスメントの対応についても触れていければと考えていますので、更新をお待ちください。

それではまた!!

